「維新政府の密偵たち」大日方純夫著
<維新の裏面史をあぶり出す力作>
明治政府の情報収集を担った密偵の実像とその活動を追った歴史読み物。
大隈重信の回想録によると、維新当初、世情が不安定になり、陰謀・暗殺が多発したため、明治政府は一種の探偵ともいうべき弾正台、廃藩置県後は監部を置いて人心の動きを探ろうとしたという。当時、政府直属の密偵として不平士族の動静を探るために動いた荘村省三や、キリスト教の動静を探索した安藤劉太郎らの活動の実際、組織の仕組み、そして彼らの末路まで。陰の存在の活動を史料を駆使してよみがえらせる。江戸時代の忍者・隠密から、近代警察機構登場までの端境期に暗躍した密偵たちの存在から維新の裏面史をあぶり出した力作。
(吉川弘文館 1800円)