「蔦重の教え」車浮代氏
■「浮世絵を世に送り出した江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎の物語です」
日本が世界に誇る「浮世絵」。歌麿や写楽など、日本以上に海外で高く評価される絵師も多い。
「浮世絵を語るとき、絶対に欠くことのできない人物がいます。彼の名は蔦屋重三郎。通称“蔦重”は、多くの浮世絵版画を世に出した版元であり、歌麿や写楽を生み育てた江戸の“名プロデューサー”です。もし彼の存在がなかったら、浮世絵がこれほどまでに広まっていたかどうか。浮世絵を研究してきた私自身、20年以上前から彼に魅せられ、いつか小説を書きたいと構想を練ってきました」
■タイムスリップして蔦重と出会う
本書は、著者が初めて手掛けた長編時代小説だが、物語の始まりが実にユニーク。時は現代で、会社から依願退職を強要された55歳の武村竹男が主人公だ。近頃は糖尿病を患い、食事制限の毎日。なのに女房は、フランスに嫁いだひとり娘の元から2カ月も帰ってこない。やけを起こしてしたたか酔い、稲荷神社の鳥居に立ちションしながら、「やり直してぇなぁ!」と叫んだ武村は次の瞬間、江戸時代にタイムスリップしてしまうのだ。