「路地裏の資本主義」平川克美氏
理想的システムといわれ、世界でもっとも広く採用されてきた資本主義。日本も資本主義の下、経済成長戦略を唱え、グローバル競争に勝ち抜くと言い続けている。
「経済は数字だけを見ていると分からないものですが、生活に目を向ければ何がウソで、どんなふうに目をふさがれているのかが分かるものです。アベノミクスなどその典型で、人口減、高齢化社会、右肩下がりの経済状況の日本を見れば、今後経済成長はありえません。では経済成長しない中で、私たちはどう生きていくか。その方法を私なりに探ったのが本書」
著者がそのひとつとして挙げるのが、野良猫がすみ着くような、昔ながらの町のシステムだ。自身も数年前、池上線のローカルな地域に事務所と住まいを移した。
「野良猫が生きていける自然が残り、商店街を利用して互いの顔が見える生活をしていく。小商いがつくり出す経済は小さいものですが、その代わり大きな浮き沈みのない定常経済が生まれます。もちろん、顔が見える生活はわずらわしさもあります。しかし、都会の大量生産、大量消費の中での暮らしにおいては金があるか否かだけがモノサシで、人間は顔のない消費者になってしまった。そして、金の切れ目が縁の切れ目の無縁社会をつくり出したわけです。これから私たちに必要なのは、小商いを中心とした、都会のそれとは反対の、“縁の継ぎ目が金の継ぎ目”の社会です」