「ナオミとカナコ」奥田英朗著
美術展の仕事をしたくて百貨店に就職した小田直美は、就職して7年になるのに希望の部署にも行けず、富裕層相手の外商部で働く日々。人事異動も望み薄のまま、いつしか会社の歯車として機械的に働くようになっていた。そんなある日、昔からの友人・服部加奈子が夫から酷い暴力を受けていることを知る。
離婚も無理で親にも相談できないという加奈子の言葉を聞き、父から母へのDVを見て育った直美の中に「殺人」という選択肢が大きく膨らみ始めるが、果たして、絶対に警察に発覚しない殺人は実現可能なのか。ついに禁断の一歩を踏み出した2人には、思いがけない事態が待っていた……。
追いつめられた女たちが、人生を取り戻すべく完全犯罪を目指す長編サスペンス小説。主人公の2人はもちろん、事件の鍵を握る百貨店の女性中国人顧客や、加奈子の夫の妹など、登場する女たちの強さは圧倒的。読み手を共犯者気分に陥らせるほどに、物語の中に一気に引き込む。
(幻冬舎 1700円+税)