「ナオミとカナコ」奥田英朗著

公開日: 更新日:

 美術展の仕事をしたくて百貨店に就職した小田直美は、就職して7年になるのに希望の部署にも行けず、富裕層相手の外商部で働く日々。人事異動も望み薄のまま、いつしか会社の歯車として機械的に働くようになっていた。そんなある日、昔からの友人・服部加奈子が夫から酷い暴力を受けていることを知る。

 離婚も無理で親にも相談できないという加奈子の言葉を聞き、父から母へのDVを見て育った直美の中に「殺人」という選択肢が大きく膨らみ始めるが、果たして、絶対に警察に発覚しない殺人は実現可能なのか。ついに禁断の一歩を踏み出した2人には、思いがけない事態が待っていた……。

 追いつめられた女たちが、人生を取り戻すべく完全犯罪を目指す長編サスペンス小説。主人公の2人はもちろん、事件の鍵を握る百貨店の女性中国人顧客や、加奈子の夫の妹など、登場する女たちの強さは圧倒的。読み手を共犯者気分に陥らせるほどに、物語の中に一気に引き込む。

(幻冬舎 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  2. 2

    大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる

  3. 3

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  4. 4

    フジ経営陣から脱落か…“日枝体制の残滓”と名指しされた金光修氏と清水賢治氏に出回る「怪文書」

  5. 5

    【萩原健一】ショーケンが見つめたライバル=沢田研二の「すごみ」

  1. 6

    中居正広氏の「性暴力」背景に旧ジャニーズとフジのズブズブ関係…“中絶スキャンダル封殺”で生まれた大いなる傲慢心

  2. 7

    木村拓哉の"身長サバ読み疑惑"が今春再燃した背景 すべての発端は故・メリー喜多川副社長の思いつき

  3. 8

    大物の“後ろ盾”を失った指原莉乃がYouTubeで語った「芸能界辞めたい」「サシハラ後悔」の波紋

  4. 9

    【独自】「もし断っていなければ献上されていた」発言で注目のアイドリング!!!元メンバーが語る 被害後すぐ警察に行ける人は少数である理由

  5. 10

    上沼恵美子&和田アキ子ら「芸能界のご意見番」不要論…フジテレビ問題で“昭和の悪しき伝統”一掃ムード