これが芸人の世界だ編

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「芸能界蛭子目線」蛭子能収著

 今やテレビは斜陽産業と化し、星の数ほど増殖した芸人たちは苦戦を強いられている。密かに落語ブームも訪れているようだが、ネットの動画で満足するやからも多く、寄席や演芸場へ足を運ぶに至っていない。画面を見るだけでは、決して知ることができない、芸人の真の魅力を、こっそりちゃっかり暴露した本を紹介しよう。

 蛭子能収を知らない人は少ない。ぼんやりした風貌、穏やかで朴訥な口調、テレビでいじられキャラとしてタレント活動をするも、本業は漫画家。

 旅番組では弱音と本音を吐き、バラエティー番組では体を張って笑いを誘い、クイズ番組では解答できずに責められる。そのくせ、映画ドラマで脇役出演も果たす。マルチな活躍で、捨てるところナシの彼が芸能界の裏話を悪意なく暴露したのが「芸能界蛭子目線」(1000円 竹書房+税)だ。

 芸能界の裏情報はたいていが宣伝がらみか、事務所側のイメージ戦略によるリークや権力闘争などに端を発するものだ。嘘くさい情報はネットで暴かれ、さらされるのが常。

 ところが、蛭子さんは芸能界の番外地的存在。正直すぎる彼の目を通してみると、今をときめく芸能人も実はまっとうで普通の人だという。

 有吉弘行も根はおとなしくて優しいのに、毒舌キャラへと必死で転向したという。芸能界での生存競争の厳しさを蛭子さんが論じているのだが、案外、的を射ている。

 カメラの前では毒舌&ハイテンションを演じる坂上忍も、実際はもの静かな男だという。蛭子さんだからこそ言える&描けることを素直にまとめてあるからリアルだ。

 また、テレビ業界の阿漕なやりくちもしれっと暴露。約15時間もロケで撮影したものの、放映はたった1分。調子のいいプロデューサーは初め「蛭子先生」と呼んでいたのが、「蛭子さん」「オヤジ」「クソオヤジ」と格下げになったとのこと。文化人コメンテーター枠での出演が、いつの間にか海パン姿で水を浴びせられるいじられ役へ。ドッキリを仕掛けられ、私服がトリモチまみれで辟易したなどの愚痴も漏らす。

 ただし、決して恨み節ではない。苦笑しながらも芸能活動を楽しんでいる様子が伝わってくる(お金が欲しいという本音も決して隠さず)。そんな蛭子さんも自宅にウンコや石を投入されたり、ファンを装ったイタズラ電話に遭うなど、嫌な思いもしているという。あれだけテレビに出ていても芸能界に友達はいないと断言。楽屋では誰ともしゃべれずに孤独感を味わっているそうだ。

 芸能人に憧れるも、なりきれないまま芸能界に所属。奇妙な立ち位置の蛭子さんの本音は人畜無害で、爆弾発言ではない。達観者のように見えるが、それも違う。基本的に芸能人(他人)に無関心なのだ。そこが蛭子さんの持ち味なのかもしれない。

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