300人分の「扮装」が生み出すフシギ
天・地を除く「本全体」を覆い隠すようにグルリと巻き付けられた黒い厚紙は、変則カバーといったところ。正面左側半分、縦方向に巻き付いている「帯」もまた黒一色。
極めつきは本文。「全ページ黒バック」は先述の通り。インキは盛りに盛ってある。加えて、天・地・小口3方向の断面も黒く着色。冒頭のバリバリ音の正体はこれ。染料で黒く塗られた部分が剥離する音だ。紙地の白は、撮影スタジオ内の「写り込み(邪魔な光)」同様、徹底的に排除されている。カバー、帯を外したむき出しの本書は、どの方向から見ても「黒い部屋」そのものだ。
最後に。本書の「開きやすさ」は特筆に値する。今日普及しつつある技術、「PUR製本」については指摘するだけにとどめ、またの機会の宿題としよう。(青幻舎 5000円+税)
◇みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。