地方の時代は本当に来るのか
「地域力の再発見」岩佐礼子著
人はしばしば先進国は自ら発展する力を内に秘め、途上国は外から発展力を注入しないといけないと考えがちだ。これに異を唱えた比較社会学者・鶴見和子は地元社会を「同じ生態系を共有する村と町との連続体」と捉え、これが複数重なり合う地方が伝統的に保持するフトコロの深さを評価して「内発的発展論」を唱えた。
本書はこの概念を踏まえ、現代の地域再生の可能性を地元社会の中に横たわる「教え合い・学び合い」の力に注目する。硬派の学術書だが、底に流れる精神は柔軟で奥深い。(藤原書店 3600円+税)