安倍政権の待機児童解消政策で保育の現場崩壊が加速!?
「ルポ 保育崩壊」小林美希著
近頃、保育所の騒音による建設反対運動などが報道されているが、保育の現場が抱える問題はこれだけではない。歪んだ保育行政によって保育士の労働環境が悪化し、保育の質の低下が顕著になっているのだ。
小林美希著「ルポ 保育崩壊」(岩波書店 800円+税)では、保育の民間参入がもたらす弊害などを分析しながら、子供たちが置かれた危機的状況についても明らかにしていく。
安倍政権の「待機児童解消加速化プラン」では、2017年度末までに40万人の保育の受け皿をつくり、待機児童の解消を目指すとしている。そのために推進しているのが、保育を民間に頼る“横浜方式”。横浜市は2010年から民間企業の参入を呼びかけ、たった3年で1万人分の保育の受け皿を整備した。
しかし、株式会社の参入は保育の質を大きく左右すると本書。企業の使命はあくまでも利益を出すことだ。本来、保育は労働集約的な業界であるため人件費率が高く、利益が出にくかった。独立行政法人福祉医療機構の調べによると、社会福祉法人の保育事業では人件費率が70%を超えている。この状況で参入企業が利益を出そうとすれば、狙われるのは人件費、つまり保育士の給料だ。