“サムライの国ニッポン”の笑いは世界でも独特!?
あらゆる生物の中でも人間だけが持つ“笑う”という能力。その真理をさまざまな角度から追究するのが、ピーター・マグロウ、ジョエル・ワーナー著、柴田さとみ訳「世界“笑いのツボ”探し」(CCCメディアハウス 2200円+税)。笑いとは何か、そして何が物事を面白くするのかを、感情と行動経済学の専門家らが世界を旅しながら検証していく。
そもそも人間を笑わせるユーモアとはどんなものなのか。その研究を行う上で最も難しい国を、西洋人である著者らは日本であるとしている。世界のほぼすべての国には、“間抜けジョーク”が存在する。つまり、社会におけるアウトサイダーや愚か者、コミュニティーの辺縁に位置する人を嘲笑する、毒のある笑いのことだ。古代ギリシャのジョークを集めた世界最古のジョーク集といわれる「フィロゲロス」も、内容の4分の1が間抜けジョーク。現在のトルコに位置するキュメなどの住人を笑いの対象とするものだったという。
現代では、フランスではフランス語を話すスイス人を嘲笑し、ブラジル人はポルトガル人を笑いの種にする。アイルランド人の“間抜けさ”を笑うジョークは、イングランドやスコットランド、オーストラリアと広範囲にわたって普及している。ところが、この間抜けジョークが日本にはない。その理由を著者らは、“バカにしてよい間抜け層”が存在しないからだと分析している。