歴史的な詩集を完全復刻
というのも、カバーの「セーターの黄色」は「紙地そのもの」だが、表紙では別途黄色の網点を足さないと、白いセーターになってしまう。その他、赤いシャツ、茶色の肌、緑の背景……と、カバーと表紙の見た目が揃うよう、色味やレトロ感を緻密に調整してある。
さらに細部へ。表1の、「小さなユリと」の赤文字。今日の技術ならば、墨ベタの背景に対し「抜き合わせ」で印刷可能。が当時は「見当合わせ」の精度に問題アリ。版ズレの不安が残るため、文字スペースに見合う長方形の赤ベタを、白抜き文字に重なるよう印刷。当該箇所に透明な赤いテープを貼り付けたような不自然な仕上がり。が、これこそが芸の細かさ。往時の技術的限界すら「時代の記憶」として再現しようとしている。執念、恐るべし。(夏葉社 1600円)
■みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。