ペリリュー島を舞台に小林よしのりが描く戦争漫画
主人公の神平は、撃たれたふりをして塹壕に身を潜め、バラバラの肉片となった死体をかき集めてその中に隠れ、自らを卑怯者と自覚しながらも何とか生き延びようとする。生に執着する餓鬼と化したその姿に、戦争を知らない世代は圧倒されるだろう。
著者は安保法案に対し「シビリアンの暴走」と強い批判の姿勢を示しているが、本作に関しては主張したいイデオロギーがあるわけではなく、もっとも過酷な戦場における兵士の心理を描きたかっただけと語っている。物語の終盤には、手足を失い軍神様とあがめられた帰還兵が、物乞いをして暮らす戦後の様子なども描かれていく。戦争の現実と、戦後も続く悲劇を、我々はどれだけ理解できているだろうか。