こういう本こそ教養本である
「ホリプロ南田の鉄道たずねて三千里」南田裕介著
この連載では、あまりマニアックな本は取りあげないようにしているのだが、鉄道マニアは桁違いに数が多いので紹介しても大丈夫だろう。
著者は、ホリプロでマネジャーを務める南田裕介氏。筋金入りの鉄道オタクとして、タモリ倶楽部等にも出演しているので、顔を見たことがある人も多いのではないか。本書は、著者の鉄道愛を凝縮したものだ。
鉄道オタクには、鉄道に乗ることを楽しむ「乗り鉄」や、写真を撮ることを楽しむ「撮り鉄」など、さまざまなタイプがいるが、著者は消えていく鉄道の最後の日を見送る「葬式鉄」といわれるタイプだ。しかも、著者は、ブルートレインのようなメジャーな鉄道だけでなく、普通の通勤電車も見送る徹底ぶりだ。
例えば、東急東横線の渋谷駅が地下化された13年3月、著者はまず、東横線への直通運転が廃止される地下鉄日比谷線の恵比寿駅に出向き、最後の直通電車に乗り込む。そして学芸大学駅で折り返して、東横線の渋谷駅に向かい、最終電車前の武蔵小杉行き下り電車で代官山駅へ。そして上りの最終電車で渋谷駅に戻る。渋谷駅のホームは、鉄道ファンであふれて、「ありがとう」「ありがとう」の声援のなか、回送電車が出ていく。