究極の“上から目線”
さて、究極の「上から目線」の威力は強烈だ。大袈裟に言えば「モノの見方」をも変えてしまうだろう。地上約600メートル上空からの景色の中では、ちっぽけな「私」の個性など省略されてしまう。見えるのは人間を含む「自然の営み」の痕跡だけだ。慣れ親しんだ我々の地球が、宇宙のどこかにある「一惑星」としか映らなくなる。シンと静まりかえった景色の中に、たとえば道路や田畑など、人間にとって「価値のある」構造物を見つけたとき、あるいは富士山の宝永火口を見て将来の噴火による「被害」を案ずるとき、改めて自分が「地球人」であることに気付かされる。無人の風景に、人類の懐かしい消息を聞く。そんな逆説を楽しむ一冊だ。(朝日新聞出版 3800円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。