“ありのまま”が凄い「海」のいきもの
さて、こうした「背景の黒の差」を強調すべく、デザイン上でも最大限の配慮がなされている。つまり写真を邪魔しないよう、カバー、帯、表紙、見返しから本文にいたるまで黒尽くしなのだ(文字はすべて白抜き)。また、一冊丸ごと「黒い塊」にしたことで、著者が体験したであろう「海中の静けさ」の再現に成功しているように思う。
ところで「図鑑」と銘打ちながらも、パーソナルな感動や驚きに満ちた解説文が生き生きとして魅力的だ。それらは撮影当事者にしか書けないもの。それでも個人名義の「写真集」としなかったのは、覚悟と見識の表れとお見受けした。
A4、横長の判型が迫力アップに奏功。ハードカバー、かがり綴じ、角背。巻末に詳細なデータ集が付く。一日の終わりのリラックスタイムに「バーチャル・海中遊泳」などいかがだろう。(創元社 3600円+税)