“ありのまま”が凄い「海」のいきもの
「世界で一番美しい海のいきもの図鑑」吉野雄輔著、武田正倫監修
5ミリのクラゲから50トンのクジラまで、美しくも不思議な命たちの競演。厳選写真375点を収載。多種多様な命に満ちた豊饒なる海の世界を堪能できるビジュアルブック(帯から)。
「絵にも描けない」のは竜宮城だが、こちらは「色と形態のバリエーション」に圧倒され、言葉が追いつかないほどだ。写真はすべて著者が撮影。数十倍に拡大された微小生物も細部までクッキリ。本書では被写体を際立たせるため、「青い海と黒い背景」をビジュアル・フォーマットとしている。「形/色/浮遊/顔/発生/戦略/擬態/華/群/棲む/営み/継ぐ/遭遇」の13章構成。特等席ともいうべき各章扉に、太陽の光だけで撮影した、青い海中写真を配置。時間や状況次第で「青い海」はさまざまな表情を見せる。
一方、メーンの生物写真は、背景をすべて省略、黒バックとし、生物の色と形のみを浮かび上がらせる。「……ありのままの生物のすごさを見てもらいたいと思ったのです」とは著者の弁。水槽撮影や切り抜き画像ではない。章扉と同様、本物の海中で撮影されているため、諸条件により背景の「黒」の色合いが異なる。補正なしのままチリやゴミが写り込んでいるせいで、海の深度や奥行きがリアルに感じられる。