「パディントン」戦時中のロンドンから疎開した子どもの姿が映画のヒント

公開日: 更新日:

 今年最初の1本は来週末封切り予定の「パディントン」。ダッフルコートと赤い帽子の子ぐまキャラが人気の、英国児童文学の映画化作品だ。

 あれ? “シネ本”ってドキュメンタリーやマイナー映画専門じゃないの? と笑われそうだが、英仏合作の実写版「パディントン」はかわいいだけのキャラものではない。

 大都会ロンドンの駅頭で中流家族に拾われた迷子の子ぐまが、ドタバタ騒動を巻き起こすという喜劇仕立ては型通りだが、迷子のパディントンは首から荷札を下げた小荷物もどきの姿。実は原作者は、戦時中ロンドンから疎開した子どもらが首に荷札を下げ、トランクかたわらにぽつんと引き取り手を待っていた姿を思い出して物語を発想したというエピソードで有名なのだ。

 石井光太著「浮浪児1945-」(新潮社 1500円+税)は終戦直後にあふれ出た上野の戦災孤児たちの体験と記憶を追ったノンフィクション。空襲で親を失い、駅や地下道に群れる孤児たち。生き延びるためにゴミをあさり、ウソをつき、弱い仲間から食べ物を奪う。先に物故した野坂昭如にも戦災孤児を描いた中短編が多数あることは周知の通り。そんな焼け跡闇市派の忘れられかけた記憶を70年代生まれの作家が引き継いだのが本書だが、映画「パディントン」もごくわずかながら、そんな歴史のかけらをいまにとどめているのである。〈生井英考〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出