「硝子の太陽 R ルージュ」誉田哲也著
女性刑事・姫川玲子が活躍するシリーズの最新作。
池袋署から警視庁捜査1課に返り咲き、姫川班を率いる玲子は、世田谷で起きた一家惨殺事件の特捜本部に加わった。一家3人の死体を並べ、さらに肛門から銃弾を何発も撃ち込むという凄惨な事件だった。
玲子は現場付近で怪しい男を目撃、最寄り駅の防犯カメラ映像からフリーライター上岡であることを突き止めたが、その直後、上岡も殺されてしまう。どうやら沖縄の米軍基地反対運動にからんでいるようだ。実は28年前に昭島市で似たような手口による一家4人惨殺事件が起き、迷宮入りのまま時効を迎えていた。
この小説は、事件の犯人とおぼしき男の独白から始まる。雨の降る夜、闇の中の血塗られた悪夢。この男は、ベトナム従軍経験を持つ元米兵。彼が、再び罪を犯したのか?
難航する捜査の展開を追いながら、玲子を取り巻く刑事たちの人間模様が描かれる。信頼、恋慕、苦手、天敵。ときにコミカルなやりとりが、人間くさい。
この作品と同時に、「硝子の太陽 N ノワール」が中央公論新社から発売された。姫川玲子と「ジウ」サーガ、作者の2つの人気シリーズのコラボレーションという新しい試みが実現した。(光文社 1500円+税)