「マチネの終わりに」平野啓一郎著
新聞連載中から評判を呼び、終了時には「マチネロス」なる言葉が飛び交ったほどの話題作。
天才クラシックギタリストの蒔野聡史が運命の女性と出会ったのは、デビュー20周年記念コンサートの終演後。その女性、小峰洋子はフランスの通信社に勤めるジャーナリストで、38歳の蒔野より2つ年上。2人は出会った瞬間から互いに引かれ合う。
しかし、どちらも40代にさしかかり大きな転機を迎えていた。蒔野はこれまでの音楽家人生で初めてスランプに直面。洋子は本来の自分に立ち返るべく、バグダッド陥落後の混乱するイラク取材を志願する。
その間、蒔野と洋子はメールで相手のかけがえのなさを確認し合う。洋子にはアメリカ人の婚約者がいたが、パリで蒔野と再会したことで婚約解消を決意。2人の新たな生活が始まるかに思えたが、運命の残酷ないたずらによって2人は引き裂かれてしまう――。
別れてもなお互いを求め合う2人が、ラストで再会するシーンは感動的で大いなるカタルシスをもたらしてくれる。成熟さに満ちた恋愛小説。(毎日新聞出版 1700円+税)