「人情の味 本所松竹梅さばき帖」倉阪鬼一郎著
松吉、竹吉、梅吉の3兄弟は、本所・回向院の裏手の路地にそれぞれ寿司、天ぷら、蕎麦の見世(店)を構えていた。
ある夜、松吉と常連客の間で、近くの長屋に住む落語家の捨松の話題が持ち上がる。元同心の隠居が、松竹梅の見世をはしご酒する間に、老いて、気が弱くなった捨松のために独演会をする話がまとまる。見世のどれかを会場にして、客には松竹梅膳を出すことも決まる。相州・大山に住む捨松の生き別れの妻子と再会させるため、居合道場の師範が一肌脱ぐことになった。そんな中、松吉の寿司の師匠である丑次郎の息子・丑蔵が助けを求めて竹吉の見世に飛び込んできた。
うまい料理と登場人物たちの温かさが癒やしてくれる時代人情小説。(コスミック出版 650円+税)