「芸人最強社会ニッポン」太田省一著
芸人はいまや、お笑いを飛び出し、ありとあらゆる分野に進出。そんな日本の社会を「芸人万能社会」と名付け、その実態を読み解く社会論。
芥川賞を受賞したピースの又吉直樹ら、各分野に進出した芸人たちの活動を分析。彼らが他の分野で成功しても芸人であり続けるのは、本業以外の失敗によって社会的生命が絶たれるリスクを回避するとともに、芸を披露しなくなったことで、芸人としての評価が下がりようがない無敵状態をつくりだしていると指摘。芸人がこのような万能性を獲得した背景には、あらゆる局面においてコミュニケーション能力の高さを過剰に求める社会的要請があると説く。芸能史をたどりながら芸能万能社会の行く末を見つめるお薦め本。(朝日新聞出版 760円+税)