文豪の意外な素顔に触れる本
「ドーダの人、森鴎外」鹿島茂著
秋の夜長、ベストセラーを楽しむのもいいが、日本人に長年親しまれてきた名作をじっくり読むのもおすすめ。そこで今週は数々の名作を世に送り出してきた「文豪」と呼ばれる作家たちの素顔や、作品の魅力などを解説した「文豪がわかる本」5冊を紹介する。
「ドーダ学」なる視点から森鴎外ら明治の作家を論じた文芸評論。「ドーダ学」とは、東海林さだお氏らの提唱によって創出された「ドーダ、おれ(わたし)はすごいだろう、ドーダ、マイッタか?」という自己愛を核としてなされるすべての表現行為を分析、定式化していく新しい学問。
著者は森鴎外を、外国の思想や流行にお手本を求め、自分がお手本にいかに忠実であるか、その忠実度をドーダする「外ドーダ」の人だと分類。森鴎外の留学中の心の動きを追った作品「妄想」などを読み解きながら、当時の思想的トレンドであったハルトマンの哲学との出合いの真相を暴く。
その他、色恋沙汰や恋愛などの軟らかいテーマに価値を求める「軟ドーダ」の元祖・成島柳北らの作品も解析。(朝日新聞出版 1800円+税)