文豪の意外な素顔に触れる本
「三島SM谷崎」 鈴村和成著
三島由紀夫と谷崎潤一郎、ノーベル文学賞候補にもなった2人の巨星をサディズムとマゾヒズムの視点から論じた文学評論。
三島は「残酷な暴力を愛好するサディズムの作家」のように見えるが、必ずしもそうではなく、その本領は、加虐と被虐、SとMの要素が複雑に絡んでいるところであるという。一方のマゾヒズムの作家といわれる谷崎のマゾヒズムは、生来のものではなく、仮構された「心理的マゾヒズム」の性格が強いと著者は指摘する。
ゲイでありながら、女性と結婚した三島由紀夫の複雑な夫婦生活を、谷崎の傑作「鍵」の登場人物たちの関係から読み解くなど、それぞれの作品や史料を紹介しながら、作品に隠された2人の本性に迫る。(彩流社 1800円+税)