文豪の意外な素顔に触れる本

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「戦争と一人の作家」佐々木中著

「桜の森の満開の下」などの小説や、「堕落論」などのエッセーで知られる坂口安吾の作品群を、新たな切り口で読み直す論考。

 安吾の全作品に通底する概念は「ファルス」であり、彼は一度たりともそこを離れたことがないファルス作家であると定義。ファルスとは、笑劇や道化などと訳されるが、安吾にとっては「戯作」こそがファルスと同義だったという。安吾は当初、「ファルス」と「ファルス論」を交互に執筆。しかし、ファルスと定義された一連の作品も、その後の「吹雪物語」や「白痴」も、彼によるファルスの定義を裏切り、失敗を余儀なくされたと指摘する。さらに戦時下を生きた作家が戦中戦後に書いた作品を丹念に読み込みながら、なぜ彼がファルスを書くことに失敗し続けたのか。そして彼の真のファルスと呼びうる作品はどれかを論じる。(河出書房新社 2200円+税)

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