格差拡大の中で人知れず貧困に沈む多数の子どもたち。社会のゆがみのしわ寄せをまともに食らうのは日本の次世代だ。
「給食費未納」鳫咲子著
文科省の発表によれば給食費を払えない子どもたちについて、約6割の小中学校が「保護者の責任感や規範意識」の欠如と認識している。
しかし、給食費の未納家庭が本当にどんな状況なのかを全国規模で調査したことは実はないと本書。未納家庭が「払わない」のか「払えない」のかもわからないまま、ネットでは過剰な自己責任論による弱者いじめの暴言がまかり通る。
参議院事務局でDV法などの法案作成に関わったあと学窓に転じた著者は、現代日本の子どもたちがさらされている格差や孤立化の現実を「給食費未納」という現象の裏に見ている。
たとえば完全給食のない中学では未納こそないものの、実は朝もろくに食べないまま昼の弁当もない例がしばしばある。朝食を食べていない子どもは「自営業・自由業」ないし「フルタイムで勤務」の両親の家庭に意外なほど多いともいう。要は単に金銭的収入に限らず、多少ともゆとりある暮らしのできない家庭が増えつつあるという現実が見えてくるのである。
経済的にも心理的にも余裕のないまま、漂流する日本の行方はどこだ?(光文社 740円+税)
「貧困児童」加藤彰彦著
「貧困」は衣食住にも事欠くような状態だけではない。社会の多数が享受する生活水準を許されない「相対的貧困」が現代の貧困だ。
たとえば平均月収34万円のところ、親子3人で月収17万円。非正規雇用に病気などが重なれば、たちまち転がり落ちる可能性の高い水準だ。また親の学歴の高低も子どもに連鎖しやすいことが統計上明らか。日本の貧困率は09年統計で15.7%。OECD34カ国で上から10番目という高率(内閣府調査)。しかも民主党政権時代になるまで一切実態は公表されなかったという。
著者は子どもと貧困の問題に関わって約半世紀のノンフィクション作家・野本三吉。その人が本名で書いた最新著だ。(創英社/三省堂書店 1200円+税)
「貧困子供のSOS」読売新聞社会部
広がる一方の格差社会の中、親の窮状にまともに影響されるのが子どもたち。貧困家庭では風呂付きのアパートにも暮らせず、それを知った級友たちが「くさい」といじめにかかり、不登校に追い込まれる。兄弟姉妹がいればそこにも影響は及び、負の悪循環が家族全員を巻き込むのだ。
総勢8人の記者が連載を担当した社会面の記事を新書化したのが本書。貧しくとも医学部をめざす少年を取材し、「月1万円の塾に通わせるのがそんなに大変ですか」とうっかり尋ねてしまった若手記者の後悔など、取材する側の本音も見える力作ルポ。(中央公論新社 1500円+税)