「プライベートバンカー」清武英利著
2010年、杉山智一は深夜便でチャンギ空港に着いた。野村証券の先輩だった桜井に誘われて、シンガポール銀行でプライベートバンカーとして働くことになったのだ。タックスヘイブンのシンガポールで富裕層の資金を運用するのが仕事だ。
顧客にはIT長者といった富裕層のほか、北朝鮮の金正男などもいる。杉山はジャパンデスク担当者として、1年以内に1億米ドルの運用資産残高を集めること、100万ドルの収益を挙げることが求められていた。杉山より先に入行したバンカーがいるはずだが、なぜかその姿は見えない。
実名で「カネの傭兵たち」の正体をシビアに描くノンフィクション。(講談社 1600円+税)