「聖書と歎異抄」五木寛之、本田哲郎著

公開日: 更新日:

「歎異抄」の「善人ですら救われるのだ。まして悪人が救われぬわけはない」という親鸞の言葉と、「聖書」の「私が来たのは、真っ当な人のためではなく、罪びとのために来た」というイエスの言葉に共通の考えを見いだせる、とはよく指摘されるところ。本書は、イエスと親鸞という2人の宗教改革者の思想と、彼らが後世にもたらした影響を語り合った対話集。

 先ごろ、長編小説「親鸞」を完結した五木寛之に対するのは、バチカンで聖書を学び、司祭として大阪市西成区の釜ケ崎で日雇い労働者たちの生活支援活動や聖書の勉強会などを行っている本田哲郎。

 対話は本田の独自の読みによる「聖書」の翻訳の話から始まり、「貧しき者」の意味を巡って議論が交わされる。その後話題は、キリシタンと隠れ念仏、宮沢賢治とドストエフスキー、聖フランシスコと親鸞の同時代性から現代のナショナリズム問題へと及ぶ。

 小著ながら、2つの書の本質を見事にすくい取っている。巻末の五木の私訳「歎異抄」も必読。(東京書籍 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャースの“朗希タンパリング疑惑”で大迷惑!米29球団&日本プロ球団こぞって怒り心頭の納得理由

  2. 2

    柔道ウルフ・アロン「誤審」「不可解判定」「AI審判」「やらせ疑惑」をとことん語る

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  5. 5

    吉永小百合(10)「15歳年上のバツイチと、よく一緒になりましたね」会員限定記事

  1. 6

    「建築界のノーベル賞」受賞の権威が大阪万博をバッサリ!“350億円リング”「犯罪だと思う」

  2. 7

    渡部建はキスなし即ベッド“超自己中SEX” 元カノ女優が激白

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    柔道ウルフ・アロンが“弟分”斉藤立を語る「仏リネール選手はタツルに持たれることを恐れていた」

  5. 10

    石川佳純の争奪戦からフジテレビが脱落情報!五輪キャスター起用でアドバンテージあるはずが…