「暗手」馳星周著
かつてノーヒットノーランを記録した日本プロ球界のヒーロー、加倉昭彦。しかし肩を故障し、台湾のプロ野球で再起を懸けるが八百長に手を染め、闇世界に沈んでいく……。あの「夜光虫」の加倉が、19年ぶりに復活する。
過去を抹消した加倉は、今やイタリアに居を定め、当地の黒社会では、殺し以外なら何でも請け負う「暗手」という名で知られていた。
彼に託された新たな仕事は、イタリアのセリエAのチーム、ロッコでゴールキーパーとして活躍している日本人の大森を八百長に巻き込むというもの。巧みに大森の信頼を得た暗手は、コールガールのミカを大森に近づけるが、大森は手もなく籠絡されてしまう。仕掛けは順調にいっていたが、大森の姉の綾がかつて心から愛した麗芬と似ていることがわかってから、暗手の計画は微妙に狂っていく……。
舞台はイタリアだが、登場するのは、ほとんどが台湾や中国本土の黒社会の面々で、アジア色が濃厚。著者ならではのアジアン・ノワールが全開。(KADOKAWA 1600円+税)