「日本企業が社員に『希望』を与えた時代」 立石泰則著
松下幸之助は社員に、自分たちの仕事が世の中を良くするものだと教え、「働く希望」を与えた。GHQから財閥指定を受けて人員削減をしたときは、会社に残る者は給料の保証はできないと伝え、退職を選んでも、業績が回復したときは戻ってきてもかまわないと言った。後に松下電器の副社長や社長になった社員はこのときの出戻り組だった。幸之助の「家族主義」を捨て、米国式の経営手法を取った6代目社長の中村邦夫は、45歳以上の社員は要らないと大規模な人員削減を実施した。社員を人間として扱った幸之助と異なり、社員を単なるコストと見たため、優秀なエンジニアの流出を招いた。
日本企業の経営のあり方に対する警告の書。(七つ森書館 1800円+税)