「少子高齢化」は耳タコだが、「縮小社会・日本」といわれると改めて愕然(がくぜん)とする!
「縮小ニッポンの衝撃」NHKスペシャル取材班著
「縮小社会」という言葉が流行するきっかけになったのが昨年9月に放映されたNHKスペシャル「縮小ニッポンの衝撃」。その内容をそっくり書籍化したのが本書だ。
戦後一貫して地方から都会へと大量に人間を吸い寄せ、富を生み出して全体を成長させてきた日本。東京・大阪などはいわば巨大なバキュームカーの役割を果たしてきたわけだ。しかし今、吸い込むもの自体がなくなろうとしている。その先触れとなったのが自治体破綻で知られた北海道夕張市。Nスペの企画も、札幌放送局が継続的に夕張を取材する中で「数十年後の日本の未来図」が見えてきたことに始まったという。
国交省の統計によれば2050年、東京オリンピックの30年後までに現在、人の住んでいる地域の2割が「無居住化地域」、6割以上で人口が半数以下になるという。また53年には人口は1億人を下回り、65年には8808万人まで減少する予測というのだ。
東京都内でも、豊島区などは他の地域から転入する人が増えているのに、出生率が下がっているために「自然減」に陥っている。
まさに老化して体が縮むように衰えつつあるのが現代日本なのだ。
(講談社 740円+税)
「楽しい縮小社会」森まゆみ、松久寛著
片やタウン誌「谷中・根津・千駄木」(通称「谷根千」)発行人として地域に根ざし、ご近所同士の親密な絆で生活を守り、バブル時代も「超低空飛行で乗り切った」エッセイスト。片や「縮小社会研究会」を主宰する京大名誉教授。2人の対談は「縮小」という言葉から始まる。
日本では「縮小はイメージが暗い」といわれ、サステナブル(持続可能)という言葉が歓迎される。
「持続」は企業にとって「成長の持続」、庶民には「いまの生活の持続」と響く。しかし資源や環境の制約からそれは無理なのだ。そういう時代に谷根千のような下町の庶民の知恵と暮らしが役立つのだ、と話は広がる。高齢化も人口減少も、まずは暮らしの縮小化から始めようというメッセージだ。
(筑摩書房 1500円+税)
「人口減少時代の土地問題」吉原祥子著
国土交通省の調査によると、全国の私有地の約2割は所有者の把握が難しい状態で、その面積は九州を上回るという。今、こうした土地の「所有者不明化」問題が日本各地で表面化し、災害復旧や耕作放棄地の解消、空き家対策の支障となっている。
代表的な個人資産であり、公共性を併せ持つ土地が、なぜ所有者不明になるのか。本書は、人口減少化社会を迎える中、社会問題化するこの土地問題の現実と、その背景を論じたテキスト。
事例を挙げながら、問題の根源である相続未登記の問題を解説。さらに、問題が農村から都市へと広がっている実態を報告しながら、制度の課題、そして人口減少時代の土地制度の在り方まで考察する。
(中央公論新社 760円+税)