「都市と野生の思考」鷲田清一、山極寿一著
哲学者とゴリラ研究の権威である霊長類学研究者による対談集。
鷲田氏は京都市立芸術大学の学長、山極氏は京都大学総長と、ともに大学運営に携わる立場からまずは大学論を展開。
ジャングルが多種多様な遺伝子をストックする場であるように、「大学はありとあらゆる知の貯蔵庫であるべき」(山極氏)と、国家や市場論理が優先される現在の大学の在り方に疑問を呈する。
さらに、人口が減少し、社会が縮小する時代のリーダーとして最も重要な資質は「大切な人を先に逃がして、その人たちが安全なところにたどり着くまで、敵のいちばん近くで踏ん張る人」(鷲田氏)というリーダーシップ論をはじめ、老いや家族、教養の本質など、お互いの知見に刺激を受けながら深まる対話に引き込まれる。
(集英社インターナショナル 740円+税)