「み仏のかんばせ」安住洋子著
松助は、死罪人の首を斬り落とす徳川家御佩刀御様御用役の浅右衛門に中間として仕える。松助が実は志乃という名の女だということは浅右衛門しか知らない。10年前、14歳で奉公に出された志乃は女衒から逃げ出し、男装して江戸にたどりついた。口入屋の仲介で、浅右衛門に雇われた志乃は、以来、男として生きてきた。
しかし、ある夜、夜盗に襲われたことをきっかけに、主に迷惑が及ぶことを恐れた松助は、女に戻り、物売りをしながら長屋で人目を忍びながら暮らす。やがて、普請屋の下働きの壮太と所帯を持つことになった志乃だが、壮太も人に明かせない過去を抱えていることが分かる。
過去がある2人が支え合って生きる姿を描く人情時代長編。 (小学館 570円+税)