「日の出」佐川光晴著
明治41年、中学生の馬橋清作は徴兵を逃れるために小松を出奔する。日露戦争で出征した父が負傷して帰国したとき、おもちゃの鉄砲の音で錯乱して走り出し、急死したことが忘れられなかった。
先輩の浅間幸三郎が手配してくれた美作の鍛冶屋にかくまわれ、鍛冶職人として生きようとするが、体面を重んじ清作を連れ戻そうとする兄の追及を逃れてさらに筑豊へ……。
時が移って、清作のひ孫になる大学生のあさひは、自分が母方の曽祖父母の名前も知らないことに気づき、母にたずねる。すると父が、母には南米で鉱山の仕事をしていた兄と、浪曲の三味線弾きをしていた姉がいることを教えてくれた。
時代にあらがって生きた男とひ孫の人生を描く長編小説。
(集英社 1600円+税)