「旅先のオバケ」椎名誠著
これまで世界100カ国くらい旅してきた著者だが、中には、科学的に説明できない現象や、ふつうではおよそお目にかかることのない出来事に遭遇したことが少なからずあるという。本書は、そうした不思議な体験をつづったエッセー集。
例えば、ロシアのニジニーノブゴロドという古都のホテルでの出来事。ベッドで寝ていると、真夜中に、隣室から数人の男たちが暴れているような音が聞こえ、壁に何かを叩きつける音もする。
翌朝、どんな連中なのかと確かめに行くと、隣には部屋などなく、幅2メートルほどの階段があるだけ。後で聞いたら、そこはポルターガイスト現象が起こるので有名な場所だという。
あるいはカナダの北極圏では、夜、便意を催してテントの外で用を足していると、そこへ2000匹もの蚊が尻を目がけて襲ってきた!
そのほか、アウシュビッツの収容所やカンボジアのキリングフィールドで感じた土地の記憶など、多様な「恐怖」がつづられ、一味違ったシーナ・ワールドを堪能できる。
(集英社 1300円+税)