理系的発想本特集
「理科系の読書術」鎌田浩毅著
AI、自動運転、生体認証など、次から次へと新しい理系ワードが飛び交う昨今。文系の人にとっては、理系の人たちは一体どんなふうに物事を捉えているのか、と不思議に感じているだろう。そこで今回は、理系の人たちの発想や生き方、最新科学ネタまで、理系ワールドに迫る本5冊をご紹介!
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著者の勤務する京大に入学してくる理科系学生の中には、本を読むのが苦手だと告白する学生が少なくないという。本書は、自身も読書が苦行だったという著者が、理系的な情報処理技術から編み出した読書術本。
読書には印刷された文字を順番に読み進める「音楽的読書」と、好きなところを順不同に読む「絵画的な読書」の2つがある。文学やミステリー小説に向くのは「音楽的読書」で、それ以外は「絵画的な読書」のほうが効率よく読め、また、自分の関心のあるところだけを読めばOKだという。
読書を補助するデバイスとして「あらすじで読む文学作品」や「100分de名著」などを利用すると、難解本もインプットがたやすくなるので、大いに活用すべしと助言する。
読書が苦行な人でも仕事や勉強を効率よく進めるヒントが満載だ。
(中央公論新社 820円+税)
「理系という生き方」最相葉月著
昨今、就職を考えてか理系志向の学生が増えている。しかし、いざ進学すると何を研究テーマにするべきかわからない学生が続出しているという。
本書は、研究者が研究テーマをどう選ぶのかに疑問を持った著者が、東工大の学生に向けて行った理系研究者の生き方についての講演録。取材を通して見えてきた研究者の考え方やキャリア選択について、深掘りした内容となっている。
たとえば、クラゲ研究でノーベル賞を受賞した下村脩は、エンジニアになるのが夢だったが、戦後たまたま近くにできた長崎医科大学付属の薬学専門部に入学。その後、天然物化学の先生に声をかけられて乾燥ウミホタルと出合い、発光物質について研究するきっかけを得る。新境地を開いていく理系の人々のさまざまな歩み方が興味深い。巻末に池上彰との対談も収録。
(ポプラ社 900円+税)
「理系脳で考える」成毛眞著
「スマホは長く大切に使う」「共感を重視したコミュニケーションをとる」「政治や経済について議論する」などの特徴を持つ人を、真っ先に食いっぱぐれる「文系脳」と命名し、一刀両断しているのがこの本。
人とつながりたいだけのSNS発信を「無駄」と言い切り、理系脳ならではの「新しいものが好きで変化が好き」「刹那主義で未来志向」「自分がコミットできない社会問題には関わらず目の前の課題に集中する」などの特徴こそ、サバイバルのために今後大切にすべきだと主張している。
ご託を並べて古いものを大切にするより生活の中に新しいものをドシドシ取り入れよ、反省はするな、文系脳には関わるな、といった理系脳の主張に反発を覚える人もいそう。
アドバイスをどう取り入れるかは自分次第か。
(朝日新聞出版 720円+税)
「科学のミカタ」元村有希子著
科学記者として多くの科学事象を取材してきた著者。その中で心がざわつく話、好奇心をそそられる話など、さまざまなものに遭遇した。
そんな最近の話題を枕草子をお手本に、「こころときめきするもの」「すさまじきもの(興ざめ)」「おぼつかなきもの(気がかり)」「とくゆかしきもの(早く知りたい)」「近うて遠きもの、遠くて近きもの」に分類。この5つのアンテナが感知した昨今の話題を、わかりやすくつづっている。
たとえば、「とくゆかしきもの」では、生き物の性質を利用した最近の科学事情を紹介。犬の嗅覚を利用したがんの「検診ならぬ犬診」や、がん患者の尿に好んで集まる「線虫」という回虫の仲間を利用した検診法について言及。
難しい理系の事象も著者の筆に料理されると食べやすく変身してしまうので、ぜひ一度、ご賞味を。
(毎日新聞出版 1500円+税)
「ここが一番おもしろい 理系の話」おもしろサイエンス学会
日本国内で発売されている体重計には、「北海道型」「中間型」「沖縄型」の3種類があることをご存じだろうか。実はこれ、日本の北と南では重力にわずかな違いがあるため。たとえば、本州で中間型の体重計に乗って60キロと測定された人が、同じ体重計を持ったまま引っ越して北海道で量ると59.95キロ、沖縄に引っ越すと60.05キロになってしまうというわけだ。そんなちょっと人に伝えたくなる理系ネタが、200項目も詰まっているのがこの本。
ほかにも、「カーナビの到着予測時間の計算方法」「コアラはなぜ蚊に刺されないか」「樹木も体調が悪くなると熱が出るか」など、思わず「へ~!」と感心してしまうネタがずらり。
身近な科学ネタを仕入れて、飲み会で披露したら喜ばれそうだ。
(青春出版社 1000円+税)