著者のコラム一覧
永井義男作家

1949年、福岡県生まれ。東京外国語大学卒。97年「算学奇人伝」で第6回開高健賞受賞。「影の剣法」などの時代小説の他、ノンフィクションの「江戸の下半身事情」「図説 大江戸性風俗事典」など著書多数。

「幕末暗殺!」鈴木英治ほか著

公開日: 更新日:

 世界各地でひんぴんとテロ事件が起きている。そんな酸鼻な事件をテレビで見たり、新聞で読んだりしながら、日本人の多くは心を痛めながらも、頭のどこかで「国内にいるかぎり、テロには無縁」と思っている。日本には人種・宗教の対立はないし、そもそも日本人には原理主義や過激思想はなじまないから、と。

 だが、かつて日本にも開国か否かの激しい対立や、尊王攘夷という原理主義にもとづくテロ事件が横行した時代があった。そんな時代を、7編の短編小説で描いたのが本書である。

 なかでも、早見俊著「刺客 伊藤博文」は、塙忠宝(塙保己一の四男)の暗殺を描いている。廃帝(天皇を退位させること)の事例を調べている国学者の塙忠宝は、幕府の意向を受けた御用学者だと、尊王攘夷の志士は憤激した。そして、文久2(1862)年12月21日夜、伊藤俊輔ら2人の武士が、武器も所持していない忠宝を九段坂で襲って刀で斬り殺した。

 後日、忠宝が廃帝の調査をしていたことなどはまったくの誤解と判明した。また、実行者のひとり伊藤俊輔は、後に博文と名乗った。なんと、わが国の初代首相・伊藤博文は若き日、狂乱の時代だったとはいえ、テロリストだったのである。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末