魅力的な声の作り方本特集
「からだが生きる瞬間」稲垣正浩、三井悦子編
ふだん意識していないが、ヒトの体は楽器である。体を正しく使えば魅力的な声を出せるのだ。自分の声が嫌いな人、人前で話すのが苦手な人、あるいはカラオケがダメだという人におすすめしたい、声に関する本5冊。明日からあなたの人生が変わるかも。
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演出家の竹内敏晴は「からだ=ことば」という視点から講演をしていたが、ことばにして話すのは大変なので、歌でレッスンをするようになった。
女性には30代から40代にかけて「女の声変わり」があるという。カワイコちゃんの声で30代半ばまできて、それでは通らなくなったことに気づく。そこでレッスンすると声が1オクターブくらいボンと落ちて楽になった。
また、被差別部落の解放運動に関わっている女性で、全然声の出ない人がいた。そこで、ハンカチを丸めてボール状にして、「ばかー」と言いながら前にいる人に向かって投げさせた。ところがハンカチはぶつからず、途中で落ちてしまう。繰り返していると、すさまじい声で「ばー」という音が出た。からだ全体が動いていないと声が出ないのだ。
竹内の未発表連続座談会の記録。
(藤原書店 3000円+税)
「どもる体」伊藤亜紗著
「どもる」とは「体のコントロールが外れた状態」である。「たまご」と言おうとして「たたたたたたまご」と言ってしまうのを「すべる系の連発」という。これは力が入っていないが、力が入って「たったったったったったまご」になってしまうのを「つまる系の連発」という。
さらに、どもる体を隠そうとして生じるのが「難発」で、最初の「た」が出ずに「っっっっっったまご」になってしまう。
ところが、どもる人も歌っているときや、演技しているときはなぜかどもらない。これは「ノッている」からだ。ある人がどもっているとき、落語家の桂文福が「タン・タン・タン」と口拍子を取ると、その人がリズムに乗って、別人のように「なか・なか・こと・ばが・出に・くい・けれ・ど」としゃべりだしたという。
吃音を科学的にわかりやすく解説する。
(医学書院 2000円+税)
「姿勢も話し方もよくなる声のつくりかた」中西健太郎著
人の第一印象は「声と姿勢」で決まる。すごく魅力的な声だったり、信頼できそうな姿勢なら、ぱっと見た瞬間、多くの人に信頼されやすくなる。声を響かせるためにはいい姿勢を長く保つことが必要だ。
それには、①足の親指を平行に並べ、地面にしっかりつける②目線は高く保つ③体を縦半分に分ける「正中線」を意識することが必要だ。声のトレーニングをするときは「吹く」というイメージを持つとうまくいく。吹く前に気持ちよく深く息を吸って胸に空気をとりこんでおく。特に太く響く声を出したい人は日頃からしっかりした呼吸を心がけよう。いい声と姿勢を定着させるためには練習が必要。昔の日本語は抑揚が豊かなので、歌舞伎十八番の「外郎売り」を朗読すると、呼吸と発声の訓練になる。
いい声をつくるための具体的なアドバイス。
(ダイヤモンド社 1500円+税)
「個声をいかす歌のレッスン」飯村孝夫著
「声に自信がない」「音が外れる」などの理由で歌うのが苦手という人は多い。まず、ボイスレコーダーを使って「今日はいい天気です」という短文を、①ふだんしゃべる感じで②何か改まった心もちで③今日は休日だというウキウキした気持ちで録音してみよう。
その中で自分の好きな音声を探して、そこからスタート。音楽というのは、多少音程がズレていてもノリがよければ気にならないので、ノリ感を体で覚えることが大切。「1、2」と数えて歩きながら、手で三本締め「パパパンパパパンパパパンパン」を叩いてリズム感を鍛える。音域が狭い人は「四季の歌」のように音域が狭くても歌える歌で練習して、徐々に音域を広げていくとよい。
体を使って楽しく歌唱力をアップする方法をアドバイス。レッスン用のCD付き。
(太郎次郎社エディタス 1800円+税)
「人生は『声』で決まる」 竹内一郎著
声が良い人と悪い人とでは同じ意見を言っても、良い声の人は好印象を持たれ、何かと得をするものだという。
といっても良い声=美声である必要はなく、個性に合わせた自分の声をつくればよい。たとえば田中角栄の独特のだみ声に多くの人が魅了されたのは、情に訴える内容とその声がマッチしたからであり、毒蝮三太夫は人柄や生きた教養が声の音色に表れているから毒舌でも嫌われないのだ。
ではどのように声を磨けばよいか。一つには「あいうえお」の母音を正確に発音すること。曖昧な音がないため、聞く人の気持ちにくつろぎを与えるそうだ。声は心の働きを表すものでもあるので、肩の力を抜いてリラックスしたほうが通りのいい声になりやすく、また相手に届かせる「気持ち」も大切だ。
人間関係が円滑に進み、仕事も出来る人になる「声」の大切さとその磨き方を説く。
(朝日新聞出版 750円+税)