「〈暮らしやすさ〉の都市戦略」保坂展人著
世田谷区長として街づくりに取り組む著者は、アメリカのポートランドを訪れた。ここはかつて造船、鉄鋼業が盛んだったが、産業が衰退し、工場や会社などが閉鎖されて、人影がなく、犯罪が多発する街に。だが、鉄道の広大な操車場があったパール地区から再開発が始まり、銃眼がある19世紀末の軍事要塞が劇場にリノベーションされたり、古いホテルがくつろぎの場として蘇った。
ポートランドは「徒歩20分の生活圏」をつくることを目指し、ストリートカーや、ライトレール中心の交通網を構築した。郊外には住宅地と農地の境界線を設け、市街地の無限の拡大を止めている。
ポートランドをお手本に、人間中心の街づくりを目指す区長の挑戦の軌跡。
(岩波書店 1800円+税)