「秋田犬のおやこ」酒巻洋子写真・文
ユキのかいがいしい世話ですくすくと成長する子犬たちは、2週間もするとうっすらと目が開いてきた。
ふだんは4匹並んで行儀よくお乳を飲んでいるが、たまにどうしてか1匹だけがひっくり返ってあおむけのまま、それでも乳首を離さずお乳を飲んでいたり、シンクロするようにお互いの体を枕にして眠るなど、無心に生きる姿が何ともほほえましい。
ユキとカイ一家が暮らしているのは、実はフランスのノルマンディー地方。ここで馬や牛、羊、ニワトリなどを飼育して繁殖させている著者は、常に動物たちの生と死を間近にして暮らしてきた。あるとき、飼っていた猫が失踪してしまい、彼女の産んだ子猫2匹だけが残された。母猫を失う悲しみがあっても、子猫の存在に救われた著者は、その体験から秋田犬の繁殖をしようと思ったという。
生後4週間目からは、いよいよカイも「イクメン」デビュー。しかし、最初は子犬たちとどう接していいのか分からない様子で、その戸惑いまで伝わってくる。
父子は日増しにその距離を縮め、ユキとカイはやんちゃになってくる子供たちの遊び相手を上手につとめる。6週間が過ぎるころには、ビビり屋の長男やおっとり屋の次男、マイペースな三男、そしておてんばの長女と個性もはっきりとしてくる。