著者のコラム一覧
北尾トロノンフィクション作家

1958年、福岡市生まれ。2010年にノンフィクション専門誌「季刊レポ」を創刊、15年まで編集長を務める。また移住した長野県松本市で狩猟免許を取得。猟師としても活動中。著書に「裁判長! ここは懲役4年でどうすか 」「いきどまり鉄道の旅」「猟師になりたい!」など多数。

「居酒屋チェーン戦国史」中村芳平著

公開日: 更新日:

 市場規模1兆円。外食産業全体から見れば決して大きくない居酒屋業界では、常に激烈な闘いが繰り広げられてきた。本書は1950年代に創業し、70年代にFC100店舗を達成した「鮒忠」を居酒屋チェーンの草分け、1000店舗を実現して企業化に成功した「養老乃瀧」を先駆者と名付け、以後の歴史をつづったもの。なぜ成功したのか。創業者はどんな人物か。どこでつまずいてしまったのか。そこを打ち負かした新興勢力はどこだったのか。新書らしい無駄のない展開で、成功と衰退を繰り返す覇権争いのエッセンスをまとめ上げている。

 居酒屋はうまくいけばおもしろいほど利益が出る。だから、次々に野望を抱く経営者が現れるが、飽きられたり時代の流れを読み違えると坂を転がるように客離れが起き、生き残りは至難の業だ。80年代にご三家と呼ばれた「養老乃瀧」「つぼ八」「村さ来」。バブル崩壊後の90年代、ご三家の経営が悪化したスキに台頭し、多ブランド展開や積極的なM&Aで世代交代を成し遂げた新ご三家の「モンテローザ」(「白木屋」「魚民」「笑笑」など)、「ワタミ」(「和民」「坐・和民」など)、「コロワイド」(「甘太郎」「三間堂」など)の天下も長くは続かず、2000年代に入ると激安均一価格戦争が勃発。「鳥貴族」の人気に火がつき、ライバルたちをごぼう抜きにしてトップランナーに躍進。それを追って「塚田農場」「磯丸水産」「串カツ田中」「晩杯屋」などの新興勢力が追い上げる構図に変化している。

 まるで戦国武将の天下取り合戦のようだが、外食ジャーナリストである著者の筆致は一貫してクール。長年の業界取材で得た経営者の言葉をちりばめ、データを駆使し、偏りのない読み物に仕上げている。そこがベテランの味だなあ。学生時代から今日まで世話になってきた店が続々登場し、「そうだったのか」と何度もひとりごちてしまった。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  3. 3

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  4. 4

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  5. 5

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  1. 6

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  2. 7

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  3. 8

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

  4. 9

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

  5. 10

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場