「天は語らず」モルガン・スポルテス著 吉田恒雄訳
1609年、イエズス会司祭として日本に入国したクリストヴァン・フェレイラは、穴吊りという拷問を受けて棄教し、「転びバテレン」となった。もしこれが磔刑だったら、彼は殉教しただろう。磔刑には一種の美学があるからだ。
彼は長崎奉行所によって沢野忠庵と改名させられ、菊という女と結婚を「具体的に成就」させられた。神社で夫婦の杯を交わす瞬間、彼の目に錯乱に似た光が走った。フェレイラはキリシタン取り締まり奉行所のスパイとしての任務を与えられたが、いつかイエズス会から彼の弁明を要求する者が来ることを恐れていた。そしてある日、フェレイラの元に南蛮人が訪れる。
遠藤周作「沈黙」の主人公の真実を探る歴史小説。
(岩波書店 2800円+税)