「平成の藝談」犬丸治著
歌舞伎は、先人たちが言葉で伝える芸を、後進が受け取り自分のものにすることによって伝承されてきた。本書は、歌舞伎役者たちの芸談を紹介しながら、伝承と革新を繰り返してきた平成の歌舞伎を振り返る歌舞伎論。
「早替わり」で役者が次の役の準備をしている間、別の役者が前の役の扮装で舞台上をつなぐことを「吹き替え」という。ある役者の「吹き替えに似せろ」という言葉は、逆説的でありながら歌舞伎の本質を鋭く突いていると、その真意を解説。
その他、2代目中村小山三の「よく『芸を盗む』と言うけれど、ただ芝居に出ているだけでは盗めません」、4代目市川猿之助の「知らないでやれないのは無知。知っててあえてやらないのが妙味」など。各人の言葉を読み解きながら、歌舞伎の奥深い魅力を語りつくす。
(岩波書店 760円+税)