「全国作家記念館ガイド」作家記念館研究会編
待ちに待ったゴールデンウイークまであと1週間。前代未聞の10連休とあって、国内外を問わず、遠出する人が記録的な数になるという。多くの人が旅行の計画や準備に余念がないことだろう。
名だたる観光地や名所は大混雑が予想されるが、人ごみが苦手だという人におすすめなのが本書だ。その土地に縁のある作家たちの人生とその仕事を振り返り、関連資料を展示する文学館や、個人の記念館を紹介する初めてのガイドブックだ。
例えば、続編も含め800万部を超える大ベストセラー「氷点」の著者の「三浦綾子記念文学館」は、出身地で生涯住み続けた北海道の旭川にある。
それも氷点の舞台となった「外国樹種見本林」の入り口に立地する。営林署勤務の夫に連れられ散歩したこの林に作品の着想を得た作家は、時間帯によってさまざまな表情を見せる林を描写しようと、朝夕タクシーで乗り付けては、木々の様子や鳥の声、風の音を記録したという。
そんなエピソードを交えながら、展示の内容や館内の様子を写真を添えて解説する。
他にも、建物が1998年に旧建設省の公共建築物100選に選ばれた前衛詩人の「中原中也記念館」(山口県山口市)や、岐阜県の馬籠宿の生家跡に日本初の文学館として1947(昭和22)年に建てられた「(島崎)藤村記念館」、長年暮らした東京の家の蔵書2万冊の書庫や書斎を他界した日のままに再現する「北九州市立松本清張記念館」など、北は北海道から南は鹿児島まで全258館を収録。
文学者だけでなく、小津安二郎ら映画監督や作詞・作曲家、マンガ家など、誰もがその名を知る多士済々を網羅。大好きな作家はもちろん、未読作家の世界観を知る絶好の機会となるに違いない。
(山川出版社 1800円+税)