白人至上主義団体に潜入捜査した黒人刑事の実話
白い装束に三角の目出し帽という不気味ないでたちでお馴染みの、アメリカの白人至上主義団体秘密結社「KKK(クー・クラックス・クラン)」。そこに潜入捜査を試みた“黒人警官”本人がつづる実話が、ロン・ストールワース著、鈴木沓子他訳「ブラック・クランズマン」(PARCO出版 1500円+税)。
時は1970年代。コロラドスプリングス警察署の巡査だった著者はある日、KKKの活動を見張るべく、「白人運動を推進したいと思っている白人男性です」と手紙を送付。「ニガーに乗っ取られつつある社会を憂えています」とも書いた。パンフレットやチラシが送られてくる程度の反応があればよいと考えていたが、2週間後、手紙に記した潜入捜査用の電話が鳴る。
「やあ、私はケン・オデル。KKKのコロラドスプリングス支部のリーダーだ」
面食らった著者だが、これまで自身が白人から浴びせられてきた人種差別の言葉を駆使し、白人至上主義者として熱弁を振るう。すると相手にいたく気に入られ、KKKに入会するよう誘われる。
しかし、黒人がKKKへ出入りすることなど不可能だ。そこで考えたのが、電話は自分が対応し、直接対面する時には同僚の白人警官を派遣するというアイデア。
かくして、前代未聞の潜入捜査が始まった――。
KKKが当時、叫んでいた白人至上主義だが、50年も経った現在、トランプ大統領が同じ発言をしていることには驚かされる。「歴史は繰り返し、いつでも現在の中に存在している」と著者。
本作はスパイク・リー監督によって映画化もされている。痛快な刑事ものとしても楽しめる一方、アメリカという国の人種差別の根深さも突きつけられる。