古代人骨のDNAが導き出す日本人のルーツ
近年、発掘された古代人の骨からもDNAの分析が可能になった。その結果、私たち日本人の祖先がどこからやってきたのか、謎の解明に向け大きく前進しつつある。
篠田謙一著「新版 日本人になった祖先たち」(NHK出版 1300円+税)は、2007年刊行のロングセラーで、その後、明らかになった最新研究を加筆した新版である。
古代人骨のDNA解析から、日本人誕生の壮大な歴史を解説している。
従来、日本人のルーツである縄文人の起源は、南方から進入した旧石器時代人であり、日本列島では旧石器時代から縄文時代を通じて集団の移動と均一化が加速。弥生時代が始まる3000年ほど前までには、日本人は全国的に均一的な見た目を持っていたと考えられてきた。
一方、分子人類学の第一人者である著者の研究グループでは、全国の遺跡から出土した縄文人の人骨から、ハプログループと呼ばれるDNA配列の似た者同士を分類。すると、ハプログループには多彩な地域性があることが分かってきたという。
例えば、琉球列島を含む関西以西の地域では、「M7a」と名付けられたグループが大部分を占めるのに対し、関東から北海道では「N9b」という異なるグループが多数を占めることが明らかになった。
さらに、北海道と東北の縄文人からは「D4h2」というグループが見つかっているが、その頻度は北海道により多く、北から東北方面への流入が盛んであったことが想定される。不思議なのが、この系統の姉妹グループである「D4h3」は、アメリカ先住民にも見られるということ。その謎はまだ解明されていない。
歴史の授業で習った人類の歴史が、もはや大きく変化していることに驚かされる。