「触れることの科学」デイヴィッド・J・リンデン著、岩坂彰訳
人は、視覚や聴覚を失った世界は容易に想像することができるが、触覚を失った状態は想像しにくい。五感の中でも最も根源的な、そんな触覚の不思議を解説してくれるサイエンスエッセー。
コーヒーのホットとアイスによって異なるなど、そのとき、たまたま手に触れていたものが、未知の人物の評価に影響を及ぼす実験例などを紹介しながら、皮膚から神経、脳に至る触感の回路が複雑で奇妙なシステムであることを解き明かしていく。 1秒間に3~10センチの速さで肌をなでられたときに強く興奮するという「なでられて心地よい」という感覚のための専用の神経線維「C触覚線維」や、オーガズムの仕組みから、痛みやかゆみまで。精巧で不思議な触覚のシステムに感嘆。
(河出書房新社 880円+税)