「手のひらの小さな愛」川嶋康男著
大雪山連峰の最高峰、旭岳の麓に広がる東川町。著者が初めてクラフト作家・太田久幸の作品に出合ったのは、この町のギャラリー「コタン・クル・カムイ」だった。展示されていたのは角材の木口に描かれたオブジェ「樹魂」。太田は「太田木地工房」を開いていたが、昭和52年に旭川市工芸指導所の嘱託となった工業デザイナー、秋岡芳夫の指導を受け、ウッドクラフトを制作するようになった。
4年後、友人が持ち込んだミズナラの古材を見て、太田は目を疑った。ミズナラが語りかけてくる。このミズナラで「樹魂」を作りたいと思った。
「旋盤の魔術師」と呼ばれたクラフトマンを描くノンフィクション。
(新評論 1800円+税)