「決定版ヒルコ」戸矢学著
天皇家には名字がないが、実は名字は「姫」だという説があり、平安時代の講書にも記されている。「姫」は中国の周王朝の国姓なので、天皇は周王朝の血筋であることになる。この説を解明する手がかりとして、著者は「古事記」や「日本書紀」に出てくる謎の神、ヒルコに注目する。ヒルコは建国神話では、イザナギ、イザナミの最初の子で、アマテラスらの兄であるのに、「生み損ない」であったために葦舟に入れて流される。それは流して捨てなければならない何かがあったために切り捨てられたもので、その陰には「もうひとつの建国神話」があったのではないか。
「先代旧事本紀」など、古代の歴史書を読み解いて建国神話の謎に迫る。
(河出書房新社 1900円+税)