危うい統計
「国家の統計破壊」明石順平著
昨年末、厚労省の調査の不正が発覚。国家や社会の実態を表す基本資料が独断政権のもとで危うくなっている。
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昨年8月、同6月の毎月勤労統計調査(速報値)における名目賃金伸び率が3.6%を記録。マスコミ各社は一斉に「賃金21年ぶりの伸び率」と報じ、政権は胸を張った。
しかし名目賃金は額面そのまま。ここから物価変動の影響を除いた実質賃金を見ないと実態はわからない。ところが厚労省はいつのまにか賃金の算出方法を変えており、しかも過去の数値と比較するための改定をやめてしまった。そのため3・6%という伸び率は実は実態を反映しない見掛け倒しのものだったのだ。
著者は公的データを駆使してアベノミクス批判を繰り広げてきた弁護士で、この問題についても自身のブログで詳細に検討。本書では詳しく内容を分析し、さらに厚労省が重ねたウソの説明まで明らかにした。
第2次安倍政権発足以降、わかっているだけでも53件の統計手法が見直されている。「見直し」とは実は数字の外見を上げるためのカラクリ操作。こうして現政権は、官僚を奴隷化し、ますます独裁化を強めているのだ。
(集英社インターナショナル 820円+税)
「武器としての世論調査」三春充希著
「社会を変革する手段としての正確な政治情勢分析を、誰からも独立して探求しています」――こう宣言してブログ「みらい選挙プロジェクト」を2017年から運営する著者。無党派だからこそ正しい政治情報を持ち、政治を見つめなければならないという運動は各種のSNSを通して着実に若者の心を捉えている。
本書はそんな著者が世論調査の使いこなし方を解説。選挙前に報道各社が発表する情勢報道は「優勢」「ややリード」「伸び悩み」など曖昧表現が常。それをどう読み解けばいいのか。本書で初めてわかったことも多数ある。
(筑摩書房 1000円+税)
「広告・ニュースの数字のカラクリがわかる統計学」涌井良幸著
統計数字にウソがある、といわれても、一般人にはわからないのが実情。では、どうすればいいか。本書は小中学校レベルの算数の知識で読み解ける統計の入門書だ。
たとえば「累計販売実績3000万本!」という宣伝。累計が5年間なら年平均で600万本。愛飲者が1日1本とすると、600万本÷365で答えは1万6438。つまり、およそ1万人に1人が毎日愛飲するという計算になるのだ。統計にはコトバのカラクリもあるのだ。
(日本実業出版社 1300円+税)