「路地裏で考える」平川克美著
「路地裏目線」で世の中を見つめたエッセー。
仕事上では合理主義者であったかつての部下のユダヤ系アメリカ人が、日本映画で好きなのは「釣りバカ日誌」だとよく言っていたという。この極めて日本的な映画が彼の心を捉えたのはなぜか。そして、この原作の漫画が実に40年も連載が続く人気を得たのはなぜか。この作品を糸口に高度経済成長を経て、社会が定常化経済へと移行した時代のサラリーマン社会が持つ本質的な問題とはいかなるものかと考察する。
ほかに、「映画の中の路地裏」と題した映画評や、中学時代の友人と始めた温泉巡りの出先で考えたことなど。生活者の視点を大切に思索を深めていく。
(筑摩書房 780円+税)