本当の「女性活躍」
「ぼそぼそ声のフェミニズム」栗田隆子著
安倍政権が掲げる「女性活躍」がいかに薄っぺらか。書店にあふれる「本物」を手に取ろう。
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団塊ジュニア世代もいまや40代後半。しかし親が親だけに、本当のフェミニズムはこの世代から定着しつつあるかもしれない。そう感じさせるのが本書。
朝日新聞の書評で「これまで読んだ本の中でも一、二を争う『覇気のないフェミニスト宣言の書』」と評されて笑いを誘ったが、確かに著者は阪大の大学院まで行ってフェミニズム思想を学びながらも、多くのフェミ系論客のように舌鋒鋭く世の矛盾や男の無自覚を鮮やかに切り捨てたりはしない。大学院を中退しても派遣社員の口しかないこと、未婚であることの生きづらさなどなどを「ぼそぼそと」つぶやく。近ごろのツイッターなど声高なばかりで、本書のような「つぶやき」の妙味がない。「#MeToo」運動に当初感じた違和感の話も自然体。かしこぶらず、あきらめもしない姿勢がさわやかだ。
(作品社 1800円+税)
「うん世界の半分、女子アクティビストになる」ケイリン・リッチ著寺西のぶ子訳
世界の半分は女性。しかし、職場でも、子育てなどの私的な場でも、男女平等はいまだ実現していない。そこで、女たちよ、アクティビスト(活動家)になろうと呼びかけるのが本書だ。
たとえば抗議運動を起こすには何が必要か、署名集めはどうするか、資金の調達やメディアでの宣伝、グループ内の組織づくりの留意点は何かなどを初歩から手ほどきする。「ニューヨーク自由人権協会アシスタント・アドボカシー・ディレクター」の肩書を持つ著者は、まさに「アドボカシー」(行動支援)の専門家だ。
(晶文社 1700円+税)
「『支配しない男』になる」 沼崎一郎著
夫婦別姓、育児、DV被害者支援。どれも“並の男”にはハードルが高いと思われているが、現在60代の著者はこの実践者。大学で文化人類学を教える学者というと「普通の会社員とは違う」といわれそうだが、学者だって、本格的に育児にも加わる男は少数派。むしろ本書の特徴は、著者自身の体験談に限らない点だ。
たとえば夫婦別姓問題にふれながら、かつて香港で起きた土地相続権をめぐる「女性平等継承権論」などを引き、日本社会の常識が世界では必ずしもその限りでないことを紹介する。生活者の肌感覚と、学者の目を併せ持った実践の書。
(ぷねうま舎 2400円+税)